問題
図の回路において、正弦波交流電源と直流電源を流れる電流\(I\)の実効値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、\(E_\mathrm{a}\)は交流電圧の実効値[V]、\(E_\mathrm{d}\)は直流電圧の大きさ[V]、\(X_\mathrm{c}\)は正弦波交流電源に対するコンデンサの容量性リアクタンスの値[Ω]、\(R\)は抵抗値[Ω]とする。

(1) 10.0 | (2) 14.1 | (3) 17.3 | (4) 20.0 | (5) 40.0 |
解答
(3)
考え方
重ね合わせの理より、電流\(I\)は、
- 直流電源のみの時に流れる電流(\(=I_\mathrm{d}\)とする)
- 正弦波交流電源のみの時に流れる電流(\(=I_\mathrm{a}\)とする)
の和、 $$ I=I_\mathrm{d}+I_\mathrm{a}\tag{1} $$ と表すことができる。 それぞれ計算してみる。 直流電源のみの時に流れる電流\(I_\mathrm{d}\)は $$ I_\mathrm{d}=\frac{E_\mathrm{d}}{R}=\frac{100}{10}=10\mathrm{[A]}\tag{2} $$となる。 一方で、交流電源(\(=E_\mathrm{m}\sin\omega t\)とする)のみの時に流れる電流\(I_\mathrm{a}\)は、 $$ \begin{align} I_\mathrm{a}&=E_\mathrm{m}\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(\omega C\right)^2}\sin(\omega t+\phi)\notag{} \\ &= 100\sqrt{2}\sqrt{\left(\frac{1}{10}\right)^2+\left(\frac{1}{10}\right)^2}\sin(\omega t+\phi)\notag{} \\ &=20\sin(\omega t+\phi)\mathrm{[A]}\tag{3} \\ \end{align} $$ となる。 ここで $$ \begin{aligned} E_\mathrm{m} &: 交流電源の最大値(=\sqrt{2}E_\mathrm{a} )\\ \omega &: 角周波数 \\ C &: コンデンサの容量 \\ \phi &: 電流と電圧の位相差、\phiは\tan\phi=\frac{\omega C}{1/R}を満たす \end{aligned} $$ としている。
問題文にある容量性リアクタンス\(X_\mathrm{c}\)を素直に使えばよいのだろうけど、個人的に、なかなか感覚と結びつかないので、泥臭くコンデンサの容量\(C\)から考えています。
(1)、(2)、(3)より回路に流れる電流\(I\)は、 $$ I = 10 + 20\sin(\omega t+\phi) $$ となる。 この電流\(I\)の実効値を\(I_{eff}\)とおくと、周期\(T\)(\(={2\pi}/{\omega}\))を使って、定義より $$ I_{eff} = \sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T}I^2 \, dt} $$ となるので、これに先ほどの電流\(I\)を代入した、 $$ I_{eff} = \sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T}\{10 + 20\sin(\omega t+\phi)\}^2 \, dt}\tag{4} $$ を計算すれば、答えを求めることができる。
電流と電圧の位相差\(\phi\)は実効値を求めるにあたり、無視して良いだろうけど、せっかくなのでそのまま計算してみます。うっとおしければ、省いてしまって良いかと
(4)の\(\sqrt{ }\)の中身のみを計算すると、 $$ \begin{align} \sqrt{ }の中身のみ &= \frac{1}{T}\int_{0}^{T}\{100 + 400\sin(\omega t + \phi) + 400\sin^2(\omega t + \phi)\}\notag{} \\ &= \frac{1}{T}\int_{0}^{T}100 \, dt\tag{5} \\ & +\frac{1}{T}\int_{0}^{T}400\sin(\omega t + \phi) \, dt\tag{6} \\ & +\frac{1}{T}\int_{0}^{T}400\sin^2(\omega t + \phi) \, dt \tag{7} \end{align} $$ となる。 それぞれ計算してみる。 $$ \begin{aligned} (5)&=\frac{1}{T}\left[100t\right]_{0}^{T}=\frac{1}{T}(100T-0)=100 \\ (6)&=\frac{1}{T}\cdot 400\left[-\frac{1}{\omega}\cos(\omega t+\phi)\right]_{0}^{T} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 400(-\frac{1}{\omega})\{\cos(\omega T+\phi)-\cos\phi\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 400(-\frac{1}{\omega})\{\cos(\omega \cdot \frac{2\pi}{\omega}+\phi)-\cos\phi\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 400(-\frac{1}{\omega})\{\cos(2\pi+\phi)-\cos\phi\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 400(-\frac{1}{\omega})\{\cos\phi-\cos\phi\} \\ &=0 \\ (7)&=\frac{1}{T}\cdot 400\int_{0}^{T}\frac{1-\cos2(\omega t + \phi)}{2} \, dt \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left[t-\frac{1}{2\omega}\sin2(\omega t + \phi)\right]_{0}^{T} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left\{\left(T-\frac{1}{2\omega}\sin2(\omega T + \phi)\right)-\left(0-\frac{1}{2\omega}\sin2\phi\right)\right\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left\{\left(T-\frac{1}{2\omega}\sin2(\omega \cdot \frac{2\pi}{\omega} + \phi)\right)+\frac{1}{2\omega}\sin2\phi\right\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left\{\left(T-\frac{1}{2\omega}\sin2(2\pi + \phi)\right)+\frac{1}{2\omega}\sin2\phi \right\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left\{\left(T-\frac{1}{2\omega}\sin(4\pi + 2\phi)\right)+\frac{1}{2\omega}\sin2\phi\right\} \\ &=\frac{1}{T}\cdot 200\left\{\left(T-\frac{1}{2\omega}\sin2\phi\right)+\frac{1}{2\omega}\sin2\phi\right\} \\ &=200 \end{aligned} $$ これらの結果を(4)に代入すると、求める実効値\(I_{eff}\)は $$ I_{eff} = \sqrt{100+200}=\sqrt{300}=17.32\cdots=17.3\mathrm{[A]} $$ となる。
(6)と(7)の三角関数の積分計算に関して。
三角関数の一周期分の積分は明らかにゼロですね(と見直しているうちに気づきました・・・)
わざわざ計算する必要は無いのですが、せっかく書いたので、いちおう残しておきます。
ポイント
次の3つがこの問題のポイントになるかと思います。
- 重ね合わせの理(superposition theorem)
- コンデンサと抵抗値が並列に接続された時の電流値
- 実効値の定義
最初の2つは当たり前の人がいるかもしれませんが、個人的にはここから引っかかってしまったので、挙げておきます。
そして何よりも「実効値の定義」がもやっとしていて、きちんと理解できていないため、この問題を電験受験の最初の年に出会ったときには、あっさりと間違えてしまいました。
そして、最近になってまた、気になって復習した際には、かなり時間がかかってしまったことも付け加えておきます。
やっぱり分かっていなかった。
別途、ポイントについて書いていこうと思います。
参照
『詳細 電気回路演習(上)』のp69【21】に同じような問題が載っています。
電験の過去問で解説を読んでも分からないところは(結構多くないですか?)、これにたいてい載っているかと。
必要なことをきっちりと、そして簡潔に説明しており、辞書的に使えるかと思います。
電気主任技術者、無線通信士、無線技術士の上級試験問題のほとんどを集録しており、これらの国家試験受験者にとってもよき参考書となるであろう。
『詳細 電気回路演習(上)』大下眞二郎 著 まえがきより
今後の課題
20年以上も前の物理学科の大学生院時代の時に\(\LaTeX\)と出会い、感動しました。
感動したものの、実際に書いた修士論文の内容は薄く、とても恥ずかしいものでしたが。
そして、今回のブログで、久々に
「ブログで数式をきれいに書く」
ということは、世間一般的に、それほど大きな問題ではなく、どちらかというと小さなことかもしれませんが、個人的には今回\(\LaTeX\)を使って、ブログを書けたことはちょっとした達成感があります。
ただ、気がかりなことも残っています。
何かと言うと
- VSCode + Markdown + mathjaxで作成したが、とにかく時間がかかった
- 書いたものをアップロードするのにも時間がかかった
があります。
そのため、これらのことも効率化して、ブログにまとめようと思っています。
とにかく大変だった・・・。