読んだ本:ナミヤ雑貨店の奇蹟 東野圭吾
※少しネタバレあり
東野圭吾の小説は、疲れた時にも読め、そして少し元気を回復できるのでありがたい。
もちろんこの小説もそうです。
疲れた時にも読めるのは、文章が読みやすく、展開も軽く、何よりも、全裸で生きたまま焼き殺されるといったような凄惨なシーン(『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン著)が無いからだと思っている。
ただ、展開も軽い分、構成が安易というか都合がいいというか・・・、
まぁ、とにかくも、たくさんの元気をもらっております。
あらすじとしては、
- (過去の話)雑貨店のおっちゃんが、いろんな悩み相談を文通でする。
- (未来の話)廃墟となった雑貨店に、3人の男の子たちが迷い込み、過去からの相談に対して回答する。
- これらの過去と未来が「都合よく」つながる
といった感じ。
気になるのは、この男の子たちの回答が「正論」なのである。
そして、その「正論」に対して、相談者が受け入れられなかったりすると、「あなたはバカですか?」とお叱りモードになってしまう。
教祖であったり、占い師といった職種なら良いかもしれないけど(たぶん)、カウンセラーとしてはいかがなものかと思い、カウンセラーの「正論」が通じる世界は、これこそ奇跡に近いと思ってしまった。
また、水商売をしてお金を稼ぎたいという女性に対しては、徹底的にこき下ろし、最後は「私のことを信じ、言う通りにするのであれば」という前提で、未来のバブルを前提にして、稼ぐ手段を回答している。
なかなかの教祖モード全開である。
未来にいる人間が、未来に起こりうることを前提にして、過去の人にアドバイスをするという展開は、目新しいことではないが、いつも疑問に思うのは、
未来のことを知って行動すると、未来が変わってしまうのではないか?
ということである。
いろんな未来の行方を左右するパラメータがたくさんあり、それらが変化すると、当然、未来も変わってしまうはず、いや、変わってしまった未来が、それはそれでパラレルワールドとして存在して・・・と勝手に混乱してしまう。
あらためて、パラレルワールドは存在するのだろうか?と考えされられた小説でもありました。