【読書ノート】マチネの終わりに

※少しネタバレありです※

あらすじ

惹かれあう二人の間に様々な、本当にもう様々な障害が発生する、
という恋愛小説。

感想

二人の間に発生する「障害」が自然なものとは思えず、
「物語をある一定の長さで終わらせるための、引き伸ばしのようなもの」
に思えてしまい、途中で「障害」が発生するたびに、イライラとしてしまい、一度は投げ出してしまう。
しかし、せっかく購入したのだからと、頑張って読み、最後はとても感動してしまった。

とても感動はしたものの、それまでの、いらいらする、数々の「障害」を見せられたこともあり、胸やけしてしまっていたのも事実。

とは言うものの、最後のシーンはとても良く出来ていて、感動して何度も読み返してしまった。

気になったところ

洋子の母の不可解な行動

僕が一番気になったのは、次のような流れの最後のあたり。

  • 洋子が一方的にリチャードとの婚約を破棄
  • 日本に来るが、「障害」が発生し、蒔野に結局会えず
  • 失意のまま、日本にいる母に会う
  • 母に会った後、再びパリに戻った時に、空港にはリチャードとその姉が待っていた
  • 実は、洋子の母がこのリチャードに
    「娘が心配なので側にいてやってほしい」
    とお願いしていた

空港でリチャードとその姉が待っていたなんて、とても怖い。ホラーだ。
洋子はここで、とどめを刺されたのでしょう。
どう考えても、洋子の母がリチャードに「娘の側にいてくれ」とお願いしたのはとても理解できない。

なぜなら、

  • 洋子は蒔野という才能豊かなピアニストに惹かれている
  • 洋子の母もソリッチという才能豊かな映画監督に惹かれていた
  • 洋子の想いや行動を母はとても分かるはずなのに、短絡的なことをなぜやってしまったのだろうか
  • そもそも、洋子の母はリチャードのことを好きなのだろうか

と思ってしまったから。

哀れなフィリップ

元上司であるフィリップが洋子に対して、軽くアプローチをするが、あっさりと、しかし丁寧に流されてしまう。その時のフィリップの態度がこんな感じ。

フィリップは、洋子の言葉を聴きながら、その色を一変させた。唐突に、まるで自分の人生を、一つの風景として眺めさせられているかのような顔つきになった。そして、愕然とした様子で、何か言おうとしていた。洋子は、その異変に鈍感ではなかった。彼を優しく見つめ、しばらく黙っていた。それは必ずしも、彼らしい顔というのではなく、むしろ彼とて、まったく違った生き方も十分あり得たであろうにと想像させる顔だった。ほど経て、彼の口を衝いて出たのは、結局、極ありきたりな別れの挨拶だった。その声を洋子はいつまでも忘れなかった。

平野啓一郎. マチネの終わりに(文庫版) (コルク) (p.319). 株式会社コルク. Kindle 版.

特に今まで、きちんと実際にアプローチはしていないものの、実はその人に対して想いがあった。
そもそも、恋愛に参加していないフィリップの戦略がまずいのだろうけど、彼の反応がとてもリアルで分かるし、その悲しさも分かってしまう。

こんな事って結構あるような気がしました。

個人的な学び

納得できないときにはメールではなく、電話できちんと話すか、直接会って話さないと、と思った。
自分の人生を左右するような大切なことは、メールのみで済ませてはいけない。

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